龍馬・小五郎書簡
小五郎から龍馬へ(慶応2年1月23日) 奉呈乱筆候につき徳とご熟覧ご推量、不足のところはご料簡願いあげ奉り候 拝啓先以 ご清適大賀このことに存じ奉り候。このたびは間も無くまたご分袂仕り候都合にあい成り心事半ばを尽さず遺憾少なからず存じ奉り候。然しながらついに行違いとあい成り、拝顔も当分仕り得ず事と懸念仕りおり候ところ、ご上京につき候ては折角の旨趣も小(松)、西(郷)両氏などへも徳と通徹かつ両氏どもよりも将来見込のところもご同座にて、委曲了承仕無此上、上は皇国天下蒼生のため、下は主家のためにおいても感悦の至りにござ候。 他日自然も皇国のこと開運の場合にも立ち至り、勤王の大義も天下にあい伸び 皇威更張の端もあい立ち候節に至り候はば 大兄とご同様この事は滅せぬよう、後来のためにも明白文明に詳述仕置き申したく、然しながら今日のところにては、決して少年不羈の徒へ洩らし候は、ついに大事にも関係仕り候ことにつき、必ず心はあい用いおり申し候間ご安心は遣さる可く候。 弟(私)も二氏談話のことも呑込みおり候へども、前に申上げ候とおり、必竟は 皇国の興復にもあい係り候大事件につき、試に左に件々あい認め申し候間、その場に至り候時は、現場 皇国の大事件に直にあい係り、事そこに及ばずして平穏にあい済み候とも、将来のためには相残し置きたき儀につき、自然も相違の廉ござ候はば、ご添削成下さり候て、幸便にお送り返し遣され候よう偏(ひとえ)に願い上げ奉り候。 一 戦とあいなり候ときは、すぐ様二千余の兵を急速差登し、ただ今在京の兵と合し、浪華へも千ほどは差置き、京坂両所をあい固め候事 二 戦自然も我が勝利とあい成り候希望これ有候とき、その節 朝廷へ申上げ、きっと尽力の次第これ有候との事 三 万一戦負色にこれ有候とも、一年や半年にて潰滅いたし候と申す事はこれ無ことにつき、その間には必ず尽力の次第きっとこれ有候との事 四 是なりにて幕兵東帰せしときは、きっと 朝廷へ申上げ、すぐ様冤罪は朝廷より御免にあい成り候都合にきっと尽力との事 五 兵士をも上国のうえ、橋(一橋)会(津)桑(名)などもただ今の如き次第にて、勿体なくも朝廷を擁し奉り、正義を抗み、周旋尽力の道をあい遮り候ときは、ついに決戦に及び候のほかこれ無きとの事 六 冤罪も御免の上は双方誠心をもって相合し、皇国の御ために砕身尽力仕り候ことは申すに及ばず、いづれの道にしても、今日より双方皇国の御ため 皇威あい輝きご回復に立ち至り候を目途に誠心をつくし、きっと尽力仕りべしとの事 弟においては右の六廉の大事件と存じ奉り候。念のため前に申上げ候様、戦不戦とも後来の事にあい係わり候 (以下、略) 龍馬から小五郎へ(慶応2年2月5日) 表にお記しなされ候六条は、小(小松帯刀)、西(西郷隆盛)、両氏 及び老兄(木戸孝允)、龍(坂本龍馬)等もご同席にて談論せし ところにて、毛(すこし)も相違これなく候 後来といへども決して変り候ことこれなきは 神明の知るところに御座候。 |