木戸孝允に捧げる詩



宿命の人


悠久の宇宙をめぐる星たちよ
知っているか
人はみなその粒子より生まれ
やがては星雲に漂う塵となって
母なる宇宙にもどってゆくことを

だれも選ぶことはできない
自分がいつ どこで生まれ
どんな人生を 全うするかを

だれも知ることはない
大いなる宿命を いかなる者たちが担うかを

それを知るものは 天球の主ただひとり

この地球上に散らばる 多様な民族の
多様な歴史をさかのぼれば
その滅亡と繁栄 復活と消滅の
危うい岐路に立ち 踏みとどまって
敢然と戦いを挑む 精選の勇士たちがいたことを
あまたの学士は知るだろう

そう、嵐の海を往く船を
巧みに操る船将のように
ときには大胆に、ときにはしなやかに
舵をきる
やがて嵐が止む瞬間まで
耐え抜く力をそなえ
すべての現象を冷静に視る

たとえ、千の刃に突き刺され
苦病にのたうち 孤独の沼におぼれても
最期の刻まで 己が精神と肉体を傷め
死力をふりしぼる

民族の存亡を賭け 栄光の未来を信じて
やがて星くずになる その刻まで――

その勇士こそ わが宿命の人



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