木戸孝允に捧げる詩
時の鼓動
ふと わたしは思う
過ぎ去った時の中に 生きる人たちは
どこかでじっと 現代のわたしたちを
見つめているのだろうか、と
複雑に絡み合う 時の糸をほぐし
たどっていけば どこかで
あなたの命に触れ あなたの体温を
感じることが できるのだろうか
今もなお あなたの命の鼓動を
聴くことができるのなら
わたしは時の糸をたどり
時空を浮遊しながら
あの嵐の時代にたどりつこう
わたしを密かに誘うのは
まさにあの時代 大きな口を開いた
姿なき巨大な生命体のように
わたしをまるごと呑みこんでゆく
そのとき わたしはじっと動かずに
甦る時の鼓動を聴く その音はやがて
わが胸のときめきと共鳴し
あなたの存在を 探りあてる
それは あなたの命の響き
それは 確かな存在の証明
そして今 わたしはあなたを捉え
はるかな時の旅へと あなたを誘い
あなたは再び 現代によみがえる
わが生命を糧として 木戸孝允よ
わが心の扉をひらき 今こそ
自由な世界へと歩みだすがいい
それこそが わが魂の
切なるねがい――