木戸孝允に捧げる詩
醒めた炎
かつては紅く燃えていた
海辺に迫る嵐の予兆
まどろみから覚めた世は
まさに騒擾の坩堝
師も 友も みな
時代の熱に煽られ
ついに狂気に身を委ね
刑場に 戦場に
若き命を散らし
ひとり残された彼は
戦火をかい潜り
息を殺し 地を這い
夜露に身を濡らし
闇夜の孤独に耐え
そして じっと待つ
やがてくる 明日を
夜明けの 時を
輝ける 暁光を
けれども その先に
彼が見たものは
理想とはほど遠い
対立と欺瞞
嫉妬と怨嗟に囲まれた
危うい陽炎の楼閣が
消え入りそうに
立っているばかり
天下の夢は覚め
牢獄のごとき廟堂に
病魔に蝕まれた身を
ただそっと
横たえるだけ
されど なお
密かに息づく
胸の炎
君よ 醒めた炎よ
燃えよ 燃えよ
ふたたび 燃えよ
たとえ明日なき命でも
君よ 語れ
醒めた炎の 熱き心を
醒めた炎の
燃ゆる想いを