木戸孝允に捧げる詩


青い薔薇をあなたに





もしもこの世に 青い薔薇があるなら
捧げたい人がいる


風そよぐ五月(さつき)の野辺に
萌える若草を分けて 神秘な青色に染まる
薔薇が咲き出(いずる)なら
捧げたい人がいる


薄明の空を背景に
ひっそりと立つ墓標
あなたの面影を求め 訪う旅人は
一本の青い薔薇を手に
無言のまま佇む


人は生まれ いつか逝く宿命(さだめ)
その後の歴史の悲惨を
わたしはあなたに語らない
語れはしない
あなたの涙は見たくないから


この国を愛し この国を必死に
守ろうとしたあなたの
哀しみに染まる眸を
どうやって見返すことができるだろう


木戸さん ごめんなさい
戦争のことはなにも知らないけれど
誰かの代わりに わたしはあなたの赦しを請い
あなたの心を慰めるために
一本の青い薔薇を あなたの墓標に捧げます


木戸さん 陽は今日も天空に昇り
この国はしごく平和です
それが仮初の平和であっても
あなたがたの大いなる犠牲のうえに
今日の日本があることを
わたしは今 この胸に留めます


あなたへの愛の証に
一本の青い薔薇を
百万本の薔薇にも劣らぬ
豊かな思いを込めて


あなたに捧げます






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