<人物紹介>


木 戸 孝 允
略 歴

(1833〜1877)
きど たかよし

天保四年(1833)、長州藩医和田昌景の長男(養子を除く)に生れる。通称小五郎、号は松菊、木圭、広寒など。
天保十一年、桂九郎兵衛の養子となり、九十石を継ぐ。嘉永二年(1849)、吉田松陰に兵学を学び、同五年、江戸に遊学、斉藤弥九郎の道場「練兵館」に入門し、翌年塾頭となる。さらに江川太郎左衛門(韮山代官)に洋式兵術を、中島三郎助(下田奉行与力)に造船術を、手塚律蔵(長州藩士)、神田孝平(幕臣)に蘭学を学んだ。
万延元年(1860)、有備館館長に任ぜられ、水戸、薩摩、越前などの尊攘派と交際し、水戸藩士西丸帯刀らと丙辰丸盟約を結んだ。
文久二(1862)年五月、藩命により京都に上り、公卿や他藩との折衝にあたった。この時期、藩是となっていた長井雅楽の「航海遠略策」には久坂玄瑞らとともに反対運動を展開するが、過激派とは一線を画し、公家や藩政府に対して説得工作に努める。
文久三年、「八月十八日の政変」で長州藩が京都を追われたあとは、京に潜伏して雪冤に努めた。翌年、「禁門の変」で長州が敗れ、但馬出石に逃れるまでは、のちに木戸孝允夫人となる芸妓幾松が木戸を庇護し、幕吏や新撰組の追捕からたびたび救った。
慶応元(1865)年四月、高杉晋作らの勧めで帰藩後、用談役に任ぜられ、対幕戦に備えて大村益次郎とともに富国強兵策を推進した。同二年正月には薩摩藩士西郷隆盛らと薩長同盟を密かに結び、その後幕府軍との戦いで勝利を収める。王政復古後の明治元年正月、太政官に出仕して徴士となり、五箇条誓文の起草に関与、版籍奉還、廃藩置県などに主導的役割を果たした。
明治四年(1871)、岩倉使節団の副使となって米欧各国を歴訪、明治六年に帰国すると憲法制定を建言した。留守政府の征韓論には大久保利通とともに反対したが、その後大久保らが台湾征討を企てると、これにも反対し参議を辞任して萩に帰った。
だが明治八年二月、「大阪会議」において漸次立憲制を敷くことで大久保と妥協、板垣退助とともに政府に復帰した。六月、第一回地方官会議議長となる。その間、板垣ら急進改革派と大久保の専制主義の板ばさみとなり、徐々に健康を害し、九年三月参議を辞して内閣顧問となる。
明治十年(1877)五月二十六日、西南戦争のさ中に京都で病没した。享年四十四歳(満年齢)。西郷隆盛、大久保利通とともに「維新の三傑」と呼ばれる。

 * 詳細な履歴は「木戸孝允中心の年表」(全四ページ)をご参照ください。
なお、木戸孝允の伝記は「木戸孝允への旅」にて連載中です。



木戸孝允基礎史料

★ 松菊木戸公伝(上下二冊) 木戸公伝記編纂所編
昭和2年 明治書院刊 菊判 通計2184頁。 平成8年 復刻版(マツノ書店) A5 2440頁 2冊 価格 36000円。 桂太郎が企画し、妻木忠太を編纂主任として、各方面からおよそ7000点の資料を集め、15年の歳月をかけて完成させた。批評を避け、文飾を去って、その事実を直述した維新史文献中の白眉。昭和45年にも臨川書店から復刻版が出されている。
 
★ 木戸孝允文書(全八冊) 日本史籍協会編
初版は昭和4年12月〜昭和6年4月刊 通計約3500頁。平成15年 東京大学出版会刊 定価11万3000円。 マツノ書店より 85000円(全8冊+遺文集)で販売。 嘉永5年9月〜明治10年4月までの木戸孝允から他者に宛てた書簡のほか、意見書、自叙など2200余通を収録、最終巻には和歌、俳句、詩集を含める。世間の知らない機密事項も多くみられ、維新史研究上、貴重な史料。

★ 木戸孝允日記(全三冊) 日本史籍協会編
初版は昭和7年12月〜昭和8年6月刊。昭和60年復刻再刊 東京大学出版会。平成8年 マツノ書店復刻版 価格 25000円。 明治元年4月1日に始まり同10年5月6日まで一日も欠かさず書かれている。明治政府の動向、事変などの感想や私見を記しているばかりでなく、私的な趣味、生活などにも触れ、事実のみを事務的に記した大久保利通日記とは対照的に、感受性豊かであり木戸孝允の人となりを知ることができる。

★ 木戸松菊略伝(全一冊) 妻木忠太著
大正15年、木戸孝允五十年祭の際に、著者が木戸侯爵家の委嘱によって執筆、参加者に贈本した。「松菊木戸公伝」のダイジェスト版で、巻頭に木戸孝允略年賦を載せている。非売品だが、一部が古本市場に出回っている。菊判、337頁。

★ 木戸松菊公逸事(全一冊) 妻木忠太著
昭和7年 有朋堂刊 四六判 538頁。 昭和59年 復刻版 村田書店刊 定価 6000円。 松菊木戸公伝の不備を補完するため、本人に関する逸事をまとめたもの。維新前の事跡(上篇)と維新後の事跡(中・下篇)に分け、全115話から成る。巻頭に明治5年に米国で写した写真、今様歌、明治元年の普通教育振興の自筆建言書などが掲載されている。

★ 木戸松菊公逸話(全一冊) 妻木忠太著
昭和10年 有朋堂刊。 昭和60年 復刻版 村田書店刊 定価6000円。 上記の逸事をさらに補筆した書。木戸孝允の交友60余人から直接、間接に談話を聴取して全46話を収録。著者の考証を加えることにより、その正確さを期している。

★ 醒めた炎(上下二冊) 村松剛著  ← 推奨
昭和62年 中央公論社刊 上巻712頁(定価 2600円)、下巻811頁(あとがきを含む。定価 2700円)。文庫本(全4巻)もある。昭和54年5月6日〜昭和62年2月22日まで日本経済新聞「日曜版」に406回にわたって掲載された。「菊池寛賞」受賞。小説の形式をとっているが、全編史実を扱っており、現代版「木戸孝允伝」の決定版。他書ではわからない史実が数多く紹介されており、なおかつ歴史文学としても他書の追随を許さない。史料としても、文学としてみても、最高峰に位置する作品。残念ながら現在、絶版となっているが、時々古書市場で売買されている。

★ 「木戸孝允関係文書1」 木戸孝允関係文書研究会編
2005年10月25日 東京大学出版会刊(定価 12000円) 他者から木戸孝允宛の書簡で、本書には青木周蔵、秋月悌次郎、伊藤博文、井上馨、井上勝などの手紙が収録されている。

★ 「木戸孝允関係文書2」 木戸孝允関係文書研究会編
2007年2月28日 東京大学出版会刊(定価 12000円) 他者から木戸孝允宛の書簡で、本書には岩倉具視、江藤新平、大久保利通、大島友之允、大村益次郎、奥平数馬などの手紙が収録されている。  

★ 「木戸孝允関係文書3」 木戸孝允関係文書研究会編
2008年2月28日 東京大学出版会刊(定価 12000円) 他者から木戸孝允宛の書簡で、本書には桂太郎、河瀬真孝、来島又兵衛、木戸松子、久坂玄瑞、来原はる子、来原良蔵、黒田清隆などの手紙が収録されている。  

★ 「木戸孝允関係文書4」 木戸孝允関係文書研究会編  
2009年5月29日 東京大学出版会刊(定価 12000円) 他者から木戸孝允宛の書簡で、本書には後藤象二郎、西郷隆盛、斎藤弥九郎、坂本龍馬、三条実美、品川弥二郎、周布政之助、高杉晋作などの手紙が収録されている。

■ 最近、発行された木戸孝允関連出版物 ■

★ 月刊「松下村塾」 第12号「吉田松陰と木戸孝允」
  (オールカラー)
   2005年9月 ザメディアジョン刊 A4変形 48頁 定価680円

★ 週刊「日本の100人」 第45号「木戸孝允」(オールカラー)
   2006年11月 デアゴスティーニ・ジャパン刊 A4変形 36頁
   定価560円

★ 「幕末維新の個性」 第8巻「木戸孝允」 松尾正人著
   2007年2月 吉川弘文館刊 四六版 260頁 定価2730円

* その他の関係書籍については、折々に追加いたします。

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