きどこういんへの旅 |
明治維新編 開始 2011.12.22 終了 2016.04.26 |
幕末編 完結 2011.05.08 |
2011年10月24日「明治維新編」の前文 前文 明治維新に関して、米国の知日派ジャーナリスト・フランク・ギブニー氏(2006年没。主な著書:「太平洋の世紀」上・下二巻)は次のように語っています。 明治維新が開発途上諸国に対してもつ意味が現代においてより大であるというのは、明治維新が最初の文化大革命だったからである。世界近代史において、ひとつの大きな国がその政治構造はいうにおよばず、社会、慣習、経済体制などを含めて、これほど徹底的に変化した例は、明治維新期の日本以外に類を見ない。 明治革命の模倣者たちは、失敗したとしても責められるべきではなかろう。当時の日本人がいかにしてそれを成し遂げたかは、いまでも理解し難いことなのである。 現在、世界の情勢は急速に変化しており、極東の小国で起きた百数十年前の出来事など顧みる暇もないでしょう。我々日本人はといえば、幕末維新の出来事を日本史の流れの中で捕えているので、外国人のように客観視することができません。まして大衆が記憶する歴史は単純化され、簡略化されていくので、細かな出来事は一般的概念の中にうずもれ、忘れらてしまうのです。 たとえば、幕末の長州藩は過激な攘夷思想の持ち主で、その決行者でもあり、朝廷に対してもそれを強要したかのように見られがちです。実際には、即今攘夷の過激な思想を持っていたのは朝廷であり、それを諌めたのが長州藩で、桂小五郎がその中心的な人物でした。しかし、孝明天皇の決意の固さに、長州藩も楠正成のごとき「君臣湊川」の決意を固めるに至ったのです。 維新以降の歴史においても、一連の士族の乱、西南の役などの大事件に注目が集まり、その過程で維新政府の重鎮たちがどのように行動し、葛藤していたかという詳細な状況については、あまり顧みられることがありません。人はある共通の目的に向かって時の権力者と闘っているときには固く結束しますが、ひとたびその共通の目的が達成されるや、内部抗争が勃発して分裂、昨日の味方が今日は敵となり、その闘いの成果を台無しにしてしまうことはどの国でもありがちなことです。 今日、維新政府の継続は当然のように見られていますが、その維持と崩壊は紙一重の差だったかもしれません。外部の士族や民衆の乱とは別に、政府内部において生じていた危うい事態に時の政治家たちはどのように対処し、その危機を乗り越えていったのか――それを知るには薩長両藩の中心人物たる木戸孝允と大久保利通の動静に注目することが一番の早道でありましょう。この二人の結束と葛藤が維新史を形成していったといっても過言ではないからです。 専制と寛容、果断と熟慮が交錯する維新10年間の激動の歴史を、偉大な二人の政治家、木戸孝允と大久保利通の活動に焦点を当てて、近く再開する「木戸孝允への旅・第二部 明治維新編」の中で語ってみたいと思います。 |
2004年2月23日開設時の前文 もしもあなたが孤独なら、わたしといっしょにきどこういんへの旅に出ませんか? 十歳のあどけない少女も、十五歳の多感な少年も、二十歳の希望に満ちた若者も、三十歳のちょっと退屈した主婦も、四十歳の疲れたビジネスマンも、五十歳の重責をになう企業幹部も、気の抜けた定年退職者も、八十歳のおじいさんも、おばあさんも、きっと一人ぼっちのさびしい瞬間があるはずです。 そんなとき、なぜ生きているのだろう、これからなにをしたらいいのだろう、と疑問をいだく人がいたら、わたしといっしょに旅にでませんか? 現代のわたしたちが共有する歴史への旅に――。いえ、そんなに遠い旅ではありません。ほんの百数十年まえにさかのぼるだけです。 世界が日本のとびらをたたき、突然、二世紀半もの長い眠りから醒めて、恐怖と混乱の時代をむかえたとき、わたしたちの祖先はどのように生き、亡国の悪夢と戦ったのでしょうか。 西欧列強による植民地化を許すまいと、一命を投げだして立ち上がったあの時代の若き志士たち――。彼らは徳川一藩を守ることだけに汲々としていた幕府を倒し、どのように文明開化、四民平等の統一国家をめざした明治維新を迎えることができたのでしょうか。 わたしはいま、幕末・維新の歴史ではあきらかに主役でありながら、きわめて地味で理性的であるがゆえに映画、ドラマ、小説でも、ほとんど主役として取り上げられない一人の人物をこのサイトの主役に迎えて、ひとりでも多くの人たちに、この人物、つまり「きどこういん」の人生、個性、魅力を伝えていきたいと思っています。 わたしにとっても「きどこういんへの旅」ははじまったばかりです。なんとか迷わないように、みなさんといっしょに最後までたどり着けたら、ささやかな役目を果たしたことになるでしょう。そして、今度は現在から未来への旅に出発しようと思います。そのときはみなさんに「最後のあいさつ」をすることになるのか、だれかまた、わたしの道連れになってくれるのか、それはそのときの楽しみにいたしましょう。 それでは旅支度はいいですか? いえ、手ぶらでだいじょうぶですよ。タイムマシンのスイッチオンです。さあ、出発! (注)木戸孝允の正式呼称は「きどたかよし」です。 |