木戸孝允に捧げる詩


志士の中の志士


風雲急を告げる
幕末の日本 時は1833年
西国は萩に
運命の子が生まれた

萩城下に産声をあげ
両親の愛に育まれ
肉親の喪失に涙した
 ひ弱な少年は やがて
一流の剣客に成長する

1853年 米使節ペリー来航
その日から日本は
西欧列強による
侵略の悪夢に包まれる

* * *

時は流れ 維新前夜
徳川幕府260年の権威に抗った長州藩は
滅亡寸前から果敢に戦って 蘇った

寄らば大樹の陰と
誰もが事なかれを望むなかで
孤立した藩の頂点に立って 彼は
抜群の指導力を発揮した

そして 明治維新
彼はそのために生まれ
そのために生き
そのために 闘った

けれども
いまだ未熟な国家と社会の中で
理想の実現しがたいことを悟り
苦悩する彼は なおも
民権の確立に心を砕き
やがてひとり 孤立していった

燃え尽きようとする瞬間になお
彼は 内乱の国を憂い
明日の日本を思い 懊悩しつつ
白雲の彼方に 消えていった

* * *

なぜ 彼は闘ったのか
名利を求めず 出世を策せず
彼が命かけて闘ったのは 実は
義のためでも 忠ゆえでもなく
それは 愛……そう
日本を愛していたから

愛ゆえに 私心を捨て
愛ゆえに人生のすべてをかけ
愛ゆえに己が命を捧げつくし
日本を 守り抜いた
志士の志士たるあり様を
全身で 彼は示した

いまは京都霊山に 永遠の眠りを眠る
彼がもし 現在に生きていれば
きっと 大海をわたって
全世界の人々と
賑やかに交流していたに違いない

木戸孝允よ
あなたこそは日本が
世界に誇り得る人物

志士の中の志士!


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