オリオンの旅日記2 (京都)

京都の木戸孝允旧宅
木戸孝允旧宅

木戸孝允旧宅

すみません。話が前後してしまいましたが、桂小五郎像を見る前に、四条大橋をわたって木屋町通に入ったのですね。ところが木戸孝允の旧宅が見つかりません。おかしいなあ、と思っている間に小五郎像のあるホテルにたどり着いたのです。それでもう、見つからないから諦めようかと思っていたら、突然、地図に木戸孝允旧宅と書いてあるのを発見しました。今までぜんぜん気がつかなかったのは、先斗町通に並立する木屋町通ばかり見ていたからでした。旧宅は小五郎像の先にある旅館「幾松」より、さらに先のところにあったのです。和風料理店「幾松・維新庵」はちょうど時間がわるくて、昼の営業が終わっており、夜は5時から営業ということで、残念ながら食事をすることはできませんでした。他サイトでもよく見られる旅館入口の写真と木屋町を流れる高瀬川の写真を載せておきます。かなり縮小してあるので、見にくいところがあると思いますがご勘弁ください。それにしても長州屋敷跡に建てられた京都ホテルと旅館「幾松」は本当に近いですね。小五郎と幾松の逢瀬を容易に想像でき、なにか運命的なものを感じます。
ビルと飲食店が立ちならぶ木屋町は、なんだか雑然とした印象を受けましたが、明治初年の風景をどれだけ残しているのでしょうか。当時と変らぬ景色を見たいなと思いました。

旅館幾松 木屋町通りの高瀬川

清水寺からずいぶんと歩いてくたびれてしまったけれど、旧宅はいかねばなるまいと思って、「幾松」からまたがんばって歩き出しました。河原町の木戸孝允旧跡に建てられた旅館石長の間の小道を右に入っていくと、市職員会館が正面にあって、その右側の垣根を通るとそこが残された木戸孝允の旧宅でした(本ページ冒頭の写真)。ここに病気の孝允を明治天皇が見舞ったのですね。想像していたよりもずっと質素で小さな建物でした。ぐるりと建物を一周し、写真を左右から撮って、さらに庭も撮りました。しばらく敷地内に佇んでいると、明治、大正、昭和、平成と、時間の流れを感じてここでも立ち去りがたかったのですが、京都御苑まではもうすぐでした。

京都御苑で警備員に追われる

どうだろう。堺町御門を見ていこうか、御所近くの蛤御門はさらに遠いから、そこまでは無理かなあ、と思いながら、とにかくまた先へ歩くことにしました。
地図でみるより遠く感じましたが、なんとかそれらしい門に辿りつきました。でも、なにも書いてないので、ここが堺町門なのか、どこか別の場所なのか確認できません。どこかに書いてあるのかしら。ちょうど門の前に警備員が立っていたので、聞いてみることにします。
「すみません。わたしは今どこにいるのでしょう」
と言って、手にしていた地図を見せました。
「ああ、ここはね、ここ。堺町御門ですよ」
やっぱり、そうなんだー、と思いながら、たいした感慨もなく広い御苑内に入っていきました。するとあちこちにパトカーや装甲車(?)がとまっていて、なんだかものものしい雰囲気です。
なんだろう。なにかあるのだろうか。それにしても疲れた。歩きどおしだもの。
すこし先に無人の休憩所があったので、中にはいって休むことにしました。私以外に人はだれもいません。中央のまるい木作りの腰掛にすわって、
「あー、もうだめだ。これ以上歩けない。御所にいくのは諦めよう」
と地図を見て、京都駅に帰る経路を探していました。すると、
「これから、どちらへ行くのですか?」
と背後から訊ねる男性の声がしたので、振り返ってみると、先ほど私が場所を訊ねた若い警備員でした。
「えっ。ああ、御所ですよ。行こうと思ったけど、もう疲れて行けないですねー」
「御所はもうすぐそこですよ」と警備員。
「いやー、もうだめです」
「どちらからいらしたのですか?」
うーん、どうも聞き方が尋問じみてきたので、はじめて「なにか、あやしまれているらしい」と気づきました。
「私、清水寺から歩いてきたんです。足がもう一歩も動きませんよ。なんですか。なにかあるんですか。ずいぶん警備がものものしいですけど」
「あ、アメリカのブッシュ大統領が京都に来るのでね、警備が厳重になっているのです」
そういえば、そうだった。ブッシュさん、小泉首相に逢いにくるってテレビのニュースで言っていたのを思い出しました(御所の隣に建設された京都迎賓館に滞在するらしい)。
「あー、そうだったんですか。それで、こんなに――。え、もう、来ているのですか?」
「いえ、まだです。来週くるのです」
話している間に、私への疑いを解いたらしく、
「いや、そんなわけで、どこへ行くのかと、警官に聞かれることもあるでしょうけど、どうぞ気を悪くされないでください」
「あ、はーい。わかりました。あー疲れたー」
私がテーブルにつっぷしてしまったので、警備員は苦笑して、小走りでもとの場所にもどっていきました。たんなる観光客か、と確信したようです。
なによ、失礼な! 私が反米過激派の女ボスにでも見えるっていうの。あーもう、気分悪いから帰ろ。
京都御苑と立ちあがり、最後の気力をふりしぼって休憩所をでて、歩き出しました。幸い近くに地下鉄の駅があったので、そこから地下鉄に乗って京都駅までもどり、京都駅からまた電車に乗って大阪のホテルまで帰りました。そういえば、京都駅の地下街でも角かどに警察官が立っていたのを思い出します。当日でなくて本当によかったです。それにしても京都は観光客でいっぱいです。ちょっと、うんざり――シーズンをはずすべきだったかもしれません。明日はもう京都に行くのはやめよう。やはり奈良かな。ということで奈良の話は省略して、次は山口の話になります。あ、右の写真は警備員に尋問された休憩所付近の御苑内風景です。

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